令和3年1月20日
岩手日報 11面
「核のごみは問いかける
見えた地方の苦しみ
 原発の高レベル放射性廃棄物をどこに埋めるか。国の原子力政策に関わる重要な問題だが、NNNドキュメント「核のごみは問いかける『尊重』の先には…」 (2020年12月14日、日本テレビ系)で見えたのはむしろ、財政難にもがき苦しむ小さな町の姿だった。
 北海道寿都町の片岡春雄町長が、核のごみの最終処分場選定に向けた調査への応募検討を表明したのは同年8月。文献調査を受け入れれば最大20億円の交付金がもらえるからだ。数年後の赤字転落が確実視される町財政にとっては魅力的な財源。町長は早くも同年10月に応募書類を提出した。
 処分場が選定されるまでには文献調査に加え概要調査、精密調査と計20年程度かかる。各段階で交付金が受け取れる一方、地下300μ以上に埋めた核のごみが無害になるまでに10万年かかるという。想像を絶する年月だが、その影響を想像するのが為政者の仕事であるはずだ。
 財政立て直しは火急の課題だが、独断で突き進む町長の言動には危うさが付きまとう。慎重な議論を求める炒不直道北海道知事に言わせれば「頬を札束ではたくような」国の姿勢にも閉口する。
 調査続行について法律では、国は知事および市町村長の意見を「尊重」することになっているが、その意味はまさに玉虫色。交付金を投入しておいて途中でやめるなどということを国が本当に許すのか。将来を見据えた本音の議論が必要な時に、国と自治体がキツネとタヌキに見えてしまう。
 ドキュメンタリー番組は1時間が主流の中、Nドキュが30分にこだわるのは地方局や若手が挑戦しやすいという利点があるからだろう。さらに今回のような緊急報告ではスピード感が生きていたが、やはりもっと見たかった。(里見繁・関西大教授)