くるまのニュース
2021/02/05
日本が先行も最後はビリに? 水素社会へ欧米中は本気で舵切り 「判断と行動」遅い日本 取り残される可能性も
■再注目の燃料電池車、日本は先進国?
 おそらく皆さん「日本は燃料電池車の先進国」だと思っていることだろう。
 確かに「国別乗用・商用FCV累計販売台数」を見ると、2014年にトヨタ「MIRAI」を発売してから2016年まで日本がリードしていました。
 いや、アメリカの台数もMIRAIやホンダ「クラリティ FUEL CELL」を多数含むため、2017年くらいまで日本の技術が世界をリードしていたと考えて良いです。

トヨタが新たに開発する燃料電池小型トラック
 しかし、同じペースでしか伸びていない日本に対し、他国は急激に台数を増やし始めました。
 現時点では日本より少ないEUながら、2年くらい前から大きく動き始めており、水素社会に向け89兆円という巨額投資をすでに決めています。
 EU参加国もそれぞれ独自の水素社会に対する投資を進めており、ドイツだけでも日本の1.5倍規模の予算を付けたほどです。
 翻って我が国を見るとスタートダッシュこそ素晴らしかったものの、6年かかって未だ水素ステーションは全国で150箇所程度。
 世界最高の電気自動車に負けない「航続距離500km。充填時間3分。車両価格700万円」という素晴らしいスペックを持ったトヨタの新型MIRAIながら「水素ステーションが近所ににない」という理由で躊躇う人も多いと聞きます。
 なぜ普及しないのか。菅首相は「2050年にカーボンニュートラル」という宣言をしたものの、大上段に構えるなら「日本」という「集合体」が「そんなこと出来るワケがない」と認識しているからなのだと思う。
 確かに今の電力を火力発電所に頼っている現状からすれば、カーボンフリーは難しい。けれど世界を見るとカーボンフリー社会へ向けハッキリ舵を切っています。
 日本だけ「出来ない」とかいっていたら、取り残されるだけ。「世界」は新しいルールを作り、そちらで動き始めている。
 世界を相手にビジネスをしている我が国が新しいゲームに参加しないという選択はあり得ないことです。
 それならば、新しい陣営の作った「化石燃料は使えない」というルールブックを熟読し、そこで勝つことを考えることだと思う。
 最初から難しい内容になったけれど「新しいゲーム」の主役は電気になる。どうやって電気というエネルギーを作り、貯めておくかということです。
 説明するまでもないけれど、電気はいろんな方法で作れます。日本でいえば二酸化炭素を排出する「火力」と、排出しない「水力」「風力」「太陽光」「地熱」。原子力は二酸化炭素より危険なので考慮しない。
 電気という「エネルギー」、困ったことに使った量と作る量が均衡しないと成り立たない。
 供給過剰になると「熱」として逃がす以外に無くなり危険。足りないと電圧低下によりブラックアウトしてしまう。そこで使う分だけを発電するワケです。
 前述で挙げた5つの発電方法を見ると違う特性を持ちます。火力&水力についていえば0%から100%まで対応可能。風力と太陽光は自然任せ。地熱といえば基本的に100%稼働となります。
■好スタートをきった日本…このままだとビリになる可能性も?
 一方、自然エネルギーとして有効に使いたいのが風力と太陽光です。すでに東京電力ですら昼間の時間帯だと太陽光発電で30%近くの電力を供給出来ています。
 とはいえ太陽光発電を4倍にしたら100%を超えてしまう。さらに風力も加わってくると、電力は供給過多になってしまいます。
 実際、九州電力は太陽光発電の能力が多くなりすぎ「もういらない!」と断っている状況。つまり本来なら二酸化炭素を排出したい自然エネルギーを上手に使わないということを意味します。
 そういった状況を抜本的に解決してくれるのが新しいルールで役立つ水素だったりする。余った電力使って水を電気分解すると水素になり、それを貯めればいいのです。
 水素は運ぶことも出来る。技術の進化により燃料電池のエネルギー源として使うことで、電力に戻すことも可能になりました。
 トヨタは燃料電池車「ミライ」の技術を活かしてさまざまな水素の活用法を模索している
 また、水素は火力発電で燃やせます(燃やしても二酸化炭素は出ない)。天気の悪い日に太陽光発電が出来なくなったときや、風のない日の火力発電用として使えるのです。すべてのエネルギーのベースになると考えていい。
 前述の通り、欧米中は直近の2年から3年で水素社会に向け大きく舵を切っている。
 日本も舵を切ろうとしているものの、判断と行動という点で負け始めているような気がします。舵の切り方も推進パワーも足りません。
 このままだと先行スタートしながらもビリという状況も大いにありうる、という現状を広く知って頂けたら嬉しいと思う。