令和3年3月8日
岩手日報1面
東日本大震災10年
#311jp
地方紙協働企画
「脱原発」望む声多く
震災機に否定的考え増 全国アンケート
 東日本大震災の東京電力福島第1原発事故から間もなく10年。岩手日報社など全国の地方紙の協働プロジェクト『#311jp』が行ったエネルギー政策と原発に関するアンケートで、今後の原発政策について積極的に廃炉とすべきなど、脱原発を望む回答が8割に上った。震災を機に否定的な考えに変わった人が一定数おり、再生可能エネルギーの推進などエネルギー政策の転換を求める意向が強まっている。
 原発政策については「積極的に廃炉とし、脱原発を急ぐべきだ」と「運転延長は控え、基数を減らしながら活用」「すぐにでも廃炉に」の3項目を合わせた「脱原発」の意見が計82.3%に上った。運転延長や増設、建て替えといった 「原発容認」は14.9%にとどまった。
 福島原発事故からの10年間で、原発に対する考え方の変化も尋ねた。「今も変わらず反對」が最多の44.8%。次が「賛成でも反対でもなかったが、反対に傾いている」「賛成だったが、一定程度縮小しても良い」 「賛成だったが、今は反対だ」と続き、脱原発を望む層が増えてきた傾向がうかがえる。
 再エネヘの期待では「期待する」「ある程度」の合計が84.9%となった。本県では脱原発を望む回答が84.5%(全国平均比2.2㌽増)に上り、再エネヘの期待も87.6%(同2.7㌽増)に達した。
 原発事故で増え続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水が海洋放出された場合の風評被害対策(複数回答)では「放射線の性質や影響に関する学校教育の充実」が47.2%でトップ。これに対し、漁業を基幹産業とする本県では「漁業者への十分な補償金の支払い」が60.5%で最多、「漁業振興のための財政支援」が48.8%で続いた。
求める理由が変わってきた
 明治大の勝田忠広教授(原子力政策)の話 東京電力福島第1原発事故から10年で「脱原発」を求める理由は変わってきた。かつては恐怖心が先に立ったが、今は未解決の「核のごみの問題」を掲げる人が増えてきた。ただ、こうした声はあまり政策に反映されておらず、政府が原発を推進しようとすれば、理由を丁寧に説明する必要がある。再生可能エネルギーの推進も重要だが、省エネなど暮らしの見直しからまず始めたい。
「エネルギーは何のために必要なのか」を考えなければ、事故の教訓は生かされない。
【調査方法】無料通信アプリのLINEなどで読者とつながり、暮らしの疑問や地域課題の解決を目指す「オンデマンド(求めに応じた)調査報道」の取り組みを行う岩手日報社など全国の地方紙が連携して実施。2月8~17日に呼び掛け、47都道府県の6248人が回答した。本県は129人。多様な意見を集めることが主目的で、無作為抽出の世論調査とは異なる。