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2021/03/11
電力安定供給のため原発必要? 「真っ赤なウソ」と専門家は指摘

梶山弘志経産相
 いまだ廃炉作業の続く、東京電力福島第一原発。東日本大震災から10年経ち、世の中では原発不要論が広がったが、政府は原発維持を貫いている。ジャーナリスト・桐島瞬氏がその実態を伝える。
 「カーボンニュートラル(国内の温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロにする目標)の実現に向けて、原子力は必要不可欠な技術。新増設・リプレース(建て替え)を政策方針に位置付けることが不可欠だ」
 2月24日に開かれた経産省「総合資源エネルギー調査会」の基本政策分科会で、日本経済団体連合会の越智仁副会長はそう述べた。
 経団連だけではない。日本商工会議所の三村明夫会頭は、「安全性を確保した上で原発の活用が必須。早期の再稼働、リプレース・新増設が必要」と言及。日本労働組合総連合会(連合)の神津里季生(りきお)会長も、「代替エネルギー源が確保されるまでの間は原発を活用するべきだ」と訴えた。
 政府は「現時点で原発の新増設は考えていない」(梶山経産相)とするが、30年度の電源構成比に占める原発の割合は20~22%。目標達成には30基程度の再稼働が必要とされ、おのずと新増設が必要となる。
 また、温室効果ガス排出ゼロの目標達成に向けて、原発の活用を求める声も根強い。こうした背景から、昨年12月の同分科会でも委員の大半が原発存続に理解を示した。
 分科会を見る限り、原発支持がここにきて存在感を増したようにも見える。
 だが、元経産官僚の古賀茂明氏は、経産省は原発を維持するために巧妙なシナリオ作りをしてきたと話す。
 「世論に原発不要論が多い中、負ける可能性のある正面からの推進議論はしません。その代わり再生可能エネルギーはコストが高く、安定供給が難しいとするネガティブ情報を浸透させるなど、暗に原発を推進してきました」
 16年に見直しが行われた「エネルギー供給構造高度化法」にしてもそうだ。経産省は、30年度に供給する電気の再エネと原発を足した比率を44%以上とすることをほとんどの小売電気事業者に義務付けた。
 「両方で44%以上にするということは、再エネが増えなければ自動的に原発を増やさないといけません。経産省は表向きには可能な限り原発依存度を下げると言いながら、再エネ拡大を妨害する大手電力の行為を放置しているため、事業者は原発比率を高めるしかなくなる。こうした汚い手を使いながら外堀を埋め、気が付いたら原発の新増設が必要となる形を作っているのです」(古賀氏)
 この冬にLNG(液化天然ガス)の不足から新電力の電気料金が高騰したことも、産業界が電力の安定供給のために原発を支持する理由になっている。だが、環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏は、これも「真っ赤なウソ」と指摘する。
 「大手電力会社が出し惜しみをして、卸電力市場に玉出し(電力放出)をしなかったのが高騰した原因です。そもそも発電した電力の10%しか卸市場に出ないポンコツ卸市場を設計しておきながら、経産省はこの冬は寒かったからLNGの需給逼迫(ひっぱく)が起きたなどと意図的に誤解を与える説明をしている。お粗末です」
 そのうえで、再エネの導入をもっと大胆に進めるべきだと訴える。
 「世界のエネルギーの趨勢(すうせい)は太陽光、風力、蓄電池の3本柱と節電意識。すでに再エネは安く安定したエネルギーになっています。経済合理性が低く、リスクの塊である原発にいつまでもこだわれば、日本はますます世界から取り残されることになるでしょう」
※週刊朝日  2021年3月19日号