令和3年3月11日
岩手日報5面
見えぬ廃炉と避難終息

困難な廃炉作業が続く東京電力福島第1原発。下は放射性物質トリチウムを含む処理水などを保管するタンク=2月13日(共同通信社ヘリから)
福島原発 処分方法 先送り続く
 原子炉内の核燃料が溶融し、大量の放射性物質が広範囲に拡散した東京福島第1原発事故は、10年がたつ今も溶け落ちた燃料(デブリ)は手つかずのままだ。汚染水を浄化した後に残る処理水のタンクは千基を超え、処分方法の決定は先送りが続く。福島県によると、約3万6千人が県内外で避難生活を続けており、2041~51年が達成目標の廃炉と、避難生活の終わりは見えない。
最難関
 「事故当事者として廃炉と復興を全うするのは変わりない」。東電の小早川智明社長は強調する。2月には3号機原子炉建屋のプールに残っていた使用済み核燃料など566体の搬出を終えた。第1原発は1~3号機で炉心が溶融し、―、3、4号機の建屋が爆発で吹き飛んだ。プール内の燃料は安全な保管場所への移送が不可欠。3号機の搬出完了で廃炉は一歩前進した。
 しかし1、2号機に計1007体の燃料が残ったまま。さらに1~3号機で総量880㌧と推測される最難関のデブリの除去が待ち受ける。
 2号機で年内を目指した初の試験取り出しは、新型コロナウイルスの影響で機器の開発が遅れ、来年以降に延期。また2、3号機では、格納容器上部にデブリに匹敵する大量の放射性物質が付着していることが判明した。デブリ取り出しの障害となる懸念は強く、野党から「廃炉工程は見直すべきだ」(立憲民主党の阿部知子衆院議員)との声が上がる。
廃棄物
 第1原発ではデブリの冷却に使った水や建屋に流れ込んだ地下水に高濃度の放射性物質が混ざり、大量の汚染水が発生。放射性物質は専用の設備で取り除くが、除去できないトリチウムを含む処理水は約120万㌧に上る。
 政府は基準以下に薄めた上での海洋放出を探る。菅義偉首相も「先送りはすべきではない。適切な時期に処分方針を決定したい」と、国が前面に立つ姿勢を強調する。
 福島県沖の沿岸漁業の年間水揚げ量は事故前の2割以下。漁の規模拡大を目指し試験操業を続ける漁業者にとって風評被害は死活問題で、全国漁業協同組合連合会(全漁連)は「海洋放出は漁業者の総意として絶対反対」との姿勢を崩さない。政府は決断に踏み切れないままだ。
 廃炉の過程では膨大な量の放射性廃棄物が発生するが、処分方法や処分場所の具体的な議論は始まっていない。
 敷地外では、土などの除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)で、帰還困難区域以外から出た約1400万立方㍍を来年3月までに運び終える計画だが、45年3月を期限とする県外の最終処分場確保のめどは立つていない。
 帰還困難区域は7市町村にまたがって残る。政府は特定復興再生拠点区域(復興拠点)を設定、先行的に除染して居住再開を目指すが、拠点外では除染や避難解除の目標時期を示しておらず、地元では「将来の見通しが立たない」と不満が噴出している。