2021年5月10日
岩手日報 2面
接種後感染 事例相次ぐ  免疫できるまで約2週間  対策の継続は必須
 新型コロナウイルスワクチンの接種後、検査で陽性となる事例が世界で相次いでいる。老人ホーム入居者や医師らに加え、パキスタン首相ら首脳の感染も確認。重症化のリスクを低減させる効果もあるが、免疫ができるまで投与完了後約2週間かかるとされる。米疾病対策センター(CDC)は接種後もマスク着用などの感染対策を怠らないよう警告している。
 「ワクチン接種で生殖機能を失うと聞いた。家族には絶対に受けさせない」。変異株が流行するパキスタンのタクシー運転手 アーサン・ラザさん(55)が険しい表情で語った。同国では、医療への理解不足や陰謀論から接種を拒む人が多い。
 中国が無償提供した中国医薬集団(シノファーム)製の接種が2月に始まったが、英オックスフォード大などの4月末時点の調査によると、少なくとも1回接種した人の割合は1%に満たない。カーン首相は3月、国民に接種を促そうと自ら1回目の注射の様子を公開したが、直後に感染が判明。アルビ大統領も陽性となり、かえって不安をあおる結果となった。
 ロシア製「スプートニクV」を2回接種したアルゼンチンのフェルナンデス大統領も、4月に入り感染が明らかに。在任中の昨年10月に国民に秘密で中国製ワクチンを接種していたペルーのビスカラ元大統領は4月25日、ツイッターで感染を発表した。
 米国ではオレゴンやテキサスなど各州で老人ホームの入居者が陽性に。日本でも石川県で2回接種済みの医師の感染が確認され、佐賀県でも1回目を接種した医療機関職員の感染が判明した。
 そもそも接種すれば感染を完全に防げるわけではない。CDCは3月下旬、米製薬大手ファイザー製と米モデルナ製について、2回目接種から2週間以上経過した人は感染リスクが90%減少したとの分析を発表。4月15日には、接種を終えた約7700万人のうち約5800人が感染したと米メディアに明かした。変異株への既存ワクチンの効果は低下するとの報告もある。
 一方、ワクチンには重症化を防ぐ高い効果も認められている。英イングランド当局は3月、ファイザー製と英アストラゼネカ製のいずれか1回接種した80歳以上の人は感染後の入院リスクが80%以上減ったと発表した。
 米国は今月8日時点で国民の約45%が少なくとも1回接種したが、3月下旬から新規感染者数が一時増加するなど予断を許さない状況だ。投与後に 他人に感染させないとは限らず、米ヒューストン保健局の医務官は「接種すれば気を緩めて良いわけではない」と、感染対策の継続を求めている。
(イスラマバード、東京共同=横田晋作、新里環)