2021年5月12日
岩手日報25面
電話予約つながらず  コロナワクチン接種 開始3分で定員も  高齢者から嘆きの声  自治体、円滑化へ模索

ワクチン接種の予約方法を周知する滝沢市役所の正面玄関。初回は開始3分で埋まり問い合わせに訪れる人も見られた=11日、滝沢市中鵜飼
 65歳以上の一般高齢者を対象とする、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の予約が県内で本格化している。当初の施設入所や長期入院者から対象は一気に拡大。予約を始めた滝沢市では開始3分で定員に達し、予約できなかった高齢者からは嘆きの声も。収束の切り札とされるワクチンの円滑な接種に向けて、予約方法を改善したり、コールセンターのオペレーターを増員するなど各自治体は試行錯誤を続ける。
県内
 「10回以上電話したがつながらず、相手が出た時には締め切られていた。インターネットが使えず来週も電話するしかない」。11日に滝沢市役所を訪れた同市巣子の本宮敏見さん(79)はため息をついた。
 10日に一般高齢者約1万4千人を対象に接種予約を開始し、午前9時から電話とインターネットで受け付けたが、開始3分で初回定員の300人に達した。予約完了者のうち、手続きが迅速なネット利用者が9割を占めた。
 NTT東日本が、予約を受け付ける自治体への電話発信を制限した影響もあったと見られ、17日に始まる2回目の予約はネットと電話の定員を各400人の同数とする予定だ。
 11日に90歳以上を対象とした予約受け付けを開始した金ヶ崎町。専用の問い合わせセンターを設けたが 「電話がつながらない」など10件ほどの問い合わせが町に直接寄せられた。同町の65歳以上は約5千人。町保健福祉センターの相沢啓事務長は「町側で接種日時を調整するなど予約方法を一部見直しながら進めたい」と説明する。
 一関市では17日から一般高齢者約3万9千人を対象とした接種が始まる。4月の予約開始以降、コールセンターに電話が殺到したことから、予約はオペレーターを10人増の計20人体制で対応する。
 何度も電話し、6月以降にかかりつけ医による接種予約が取れた同市大東町の農業、菊地和夫さん(84)は「みんな予約が取れず、不安やいらいらを抱えている。いつなら可能という見通しを示してほしい」と求める。
 5月末から接種を始める盛岡市は、対象者に事前に、はがきを送付し通知。「接種できる場所を知りたい」との声が多いことから、コールセンターで予約可能な医療機関を紹介したり、折り込み広告で施設を周知する方針で確実な接種を模索する。
 厚生労働省などによると、本県は全国と同様に6月末までに、高齢者全員分の約40万5千人をカバーするワクチンが供給される見通しだ。9日時点の高齢者の接種状況は1回目が6384人、うち2回目は306人となっている。