2023年1月9日
岩手日報 1面
無給電EVキット開発へ 村上商会と一関高専
5年後 事業化目指す
太陽光利用、走行中に充電
 一関市内に工場を置く自動車部品メーカー村上商会(東京、村上竜也社長)と一関高専(荒木信夫校長)は、走りながら充電できる「無給電EV(電気自動車)」の開発に乗り出す。太陽光と自走による発電を組み合わせて、燃料がなくても100㌔程度走行できるシステムを構想。二酸化炭素(CO2)の大幅な排出抑制につながる意欲的な取り組みで、5年後の事業化を目指す。
 開発するのは「エキセントリックーEV」と名付けた車載キット。車の屋根に搭載した太陽光パネルと走行による発電、蓄電池、バッテリーマネジメントシステムなどを組み合わせる。
 市街地の走行を想定し、軽自動車などに搭載して50~100㌔程度の無給電走行を目指す。公用車や社用車への導入を想定するほか、地元の自動車整備工場にも供給し、メンテナンスできる体制も整える。
 同社は太陽光発電を取り入れたEVシステムの開発を進めており、久慈市などで実証実験を行っている。実現に向けては太陽光と走行発電という異なる発電方式の制御技術が課題となる。同校の教員と学生は、発電効率を上げるためのデータ分析などを担う。
同校の保坂陸斗さん(5年)は「世界的にEVシフトが進むが、発電過程で二酸化炭素を排出しているのが現実。真のカーボンニコートラルに貢献できることが誇らしい」と意気込む。
 同社によると国内で充電インフラの整備が進むが、急速充電器を使った場合でも80㌔の走行に15分程度の充電が必要となる。キットが実現すれば「給電ストレス」の解消にもつながる。
 経済産業省の支援事業に採択され、共同開発の事業費約1億3千万円のうち計9750万円が補助される。同校の特命研究員で同社の菊地重人シニアマネジヤーは「大手メーカーが長距離のEVを開発する中で、車ではなくキットを作って近距離を無給電走行させ、カーボンニュートラルを実現したい」と語る。